とある昼下がり。
昼食に焼いた魚が、なんだか味気ない…。
何気なく食卓にあった醤油をひとかけすると
うん! 味が締まって美味しい…!
…ふと、今使った醤油をしみじみ見てみる。
あまりにも当たり前にありすぎて、
今まで深く考えたことがなかった。
これだけ毎日のように使い、ありとあらゆる料理に
大活躍する「醤油」なのに、
どうやって作る? どこで作ってる? 種類は?
上手な選び方は?
………?
私ったらなんにも知らない!
おぉこれぞ「ママモニ隊」の出番ではないですか!
料理大好き、好奇心旺盛なママモニ隊が、「醤油」の
知られざる秘密と魅力をひもとくため、いざ出動です。
栄えある「第1回ママモニ社会科見学」は
大村市に工場を構える「長工醤油味噌協同組合」さんへ
お邪魔しました。
さてさて、醤油のアレコレ、じっくり調べてみましょう。
長工醤油味噌協同組合とは…?
「チョーコー」でおなじみの「長工醤油味噌協同組合」は、昭和16年(1941)、長崎県内の有名醸造元29軒が共存共栄、
企業の合理化を目指して全国初となる共同施設による共同生産、販売という独特の形態の長崎醤油味噌醸造工業組合として発足。
原爆で壊滅的な打撃を受けながらも昭和34年(1959)、「伝統の風味を最新鋭の設備で」をスローガンに掲げ、
当時としては画期的なオートメーションシステムを取り入れた本社醤油工場を完成させた。その後、拡大、成長にともない
昭和51年(1976)に、大村市に醤油工場を移転。
現在では、西九州一円はもとより、関東、関西、北海道、遠くは海外へと販路を拡大し、全国に「チョーコー醤油」という
ブランド名を轟かせている。
醤油工場見学へGO!
大村市溝陸町にある「長工醤油味噌協同組合大村工場」にママモニ隊、降り立ちました!車のドアを開けた瞬間から漂う醤油の香ばしい香り…
さぁ、醤油製造の本丸に切り込みますよ。
技術部研究開発課 課次長の後藤豊さんに、工場の中を案内してもらいました!
醤油資料蔵へ
65,000平方メートルという広大な敷地の中、後藤さんと最初に向かったのは「醤油資料蔵」。
現在の「チョーコー」ができる以前、29軒の醸造元としてそれぞれが醤油を製造していた時代の歴史ある道具などが、当時の製法に基づいて展示されています。
この建物自体、実際に醸造元が蔵として使っていたものを移築した由緒あるものなのです。
「昔はこんな風に作っていたんだ〜」と、感心しているママモニ隊に、
「作り方自体は今もほとんど変わらないんですよ。
道具や工場環境が進歩したことで、ほんの少し早く作れるようになりましたが、手順は昔通りなんです。」と後藤さん。
おいしい醤油を作る3本柱は
1.きく(麹)
2.かき(かきまぜる)
3.火入れ(ほど良い加熱)
この3本柱を軸に、現在の工場もシステム化されているそうです。
いよいよ、醤油製造の本丸、工場内へ突撃です!
醤油の製造工程は?
1.原料となる大豆を蒸し、小麦を砕いて炒る
2.蒸した大豆と炒った小麦を合わせ種麹を加える
3.2.で作った麹に、食塩水を加え仕込み、諸味を作る
4.諸味を発酵、熟成、圧搾し、生醤油を作る
5.生醤油に火入れをし、検査を経て、製品へ!
約6ヶ月から1年もの時間をかけ、じっくりと醸造されていくのです。
醤油作りって、大変!
2.の工程で使用されるのが「製麹室」。
2階建ての建物で、2階に円盤性の麹装置が設置。
1階から空気を送り込めるよう、2階の床はステンレス製の網になっています。
適度な湿度を保ち、麹菌が成長しやすいよう様々な工夫が凝らされているそうです。
3.の工程で使用されるのが、高さ16m、内容量9万リットルの「諸味発酵タンク」。
中には、諸味と塩水が入っており6か月〜1年をかけて熟成させるそう。
「現在、使用しているタンクはスーパーステンレスという非常に強い、劣化しない材質で作られています。その強度は100年保つといわれるほど。
傷がつきにくい材質ですので、衛生面でも優れています。
9万リットル入るタンクが24本あるんですよ」(後藤さん)
実はチョーコーさんには、スーパーステンレス製のタンクの他に、昔ながらの「木樽」もあるのです!
原点回帰とも言える「木樽」は、約1年前に導入。
カナダ産の樹齢250年以上のヒバで、釘などの金属を使わず作られています。
昔ながらの熟成を求めたこだわりの醤油は「木樽むらさき」として
発売されましたが、瞬く間に完売!
それもそのはず、4万リットルの樽が4本のみなので
年間に16万本しか製造できないのです。
今まさに次の出荷へ向けて1年をかけて熟成中。
まさに幻とも言うべき木樽醤油ですが、運が良ければいつか味わえるかも!
4.で熟成した諸味を搾り取る圧搾機は、オートメーション化されているけれど袋状になった布に諸味を挟み、圧力をかけて搾り取るという仕組みは昔ならではのもの。
今と昔が見事に息づいているシステムに、ママモニ隊一同、感服です!
5.の火入れの工程は、関係者以外立ち入り禁止の聖域。
というのも、火入れは滅菌という衛生面の最後の砦。
品質を保つためには、徹底した厳しい管理が必要なんですね。
火入れが終わった醤油をボトルに詰める充填ラインは見学可。
ここでも徹底したオートメーションの無菌管理が実践されていました。
長工醤油味噌協同組合・今村専務と醤油&味噌談義
一通り製造工程を見学し、その後、会議室へと移動。
長工醤油味噌協同組合の今村専務に、醤油と味噌について、いろんなお話を聞かせていただきました。
知っておきたいJASマークと醤油の上手な選び方
スーパーなどの醤油コーナーには、それこそいろんなメーカーのいろん
な醤油がズラリと
並んでいます。みなさんは、何を基準に醤油を選んでいますか?
今村専務
「醤油選びで重要なのは、“JASマーク”です。
JASマークの上を見てください。「特級」「上級」「標準」のいずれか
の表示がしてあります。「特級」の表示は本醸造方式の醤油と、「再仕込み醤油」の混合醸造方式に限って認められて
います。特級などの等級はうまさの指標といわれている「窒素分」の含有量やエキス分などで決まります。つまりJASマークを見ると、
その醤油の質が分かるんですね。」
左端はチョーコーさんの「超特選むらさき」、JASマークには
「特級」と表示してあります。でも、JASマークでは、それ以上のランクは名乗れないのだそうです。(特級の中でも様々な条件をクリアしたものだけが「超特選」を名乗れるらしい)
隣のペットボトルはこの「超特選むらさき」1リットルに含まれている原料が入っています。ほとんど大豆と小麦といってもいいほどギッシリ! それだけ余計なものが
入っていないという証拠。
今村専務
「もう一つ、醤油選びで注目してほしいのは、ボトルの裏側のラベルです。
ラベルには、醤油の種類や製造方式をはじめ、原材料名、内容量、賞味期限、保存法、製造者など、商品を選ぶ際に目安となる情報がいっぱい記載さ
れています。
原材料名は多く含まれている順番に表記されていますから、何をたくさん
使っているかが、一目瞭然。ただ、現段階ではアミノ酸や保存料など食品添加物は原材料とは別記載になっています。」
工場見学の際、後藤さんの言葉で印象的だったのは、
「醤油を作るには、原材料はもちろんですが、
6ヶ月〜1年の時間、多くの手間がかかります。
最近、均一ショップなど安くで売られている醤油がありますが、どうしたらそんなに安くで作れるのか、教えてほしいくらいです(苦笑)」。
値段というのはとても正直なもの。
100円の醤油があるのも事実です。
今回、納得させられたのは今村専務のお話。
一般的に安い醤油は、原材料が少ないため、当然のことながら色も味も薄い。
それらを補うためにカラメルで色を付け、アミノ酸や調味料で味を足しているそうです。
また、そうした添加物の多い醤油は劣化が早いため保存料を加える…と。
う〜ん…そう考えると、これは果たして「醤油」というのかしら?
そう考えると、チョーコーさんの「超特選むらさき」ってスゴイ!!
少なくともこの目で見たチョーコーさんの醤油は、値段以上の価値があるように思いました。だって、あの原材料とあの手間、あの時間をかけて安心で安全なものを、作ってくれているのです。どう考えたって、100円なんてあり得ません。
今村専務
「うちは味噌も作っているのですが、みなさん、味噌を食べ比べたことありますか?それぞれで味が全く違うんですよ」
そう言って、今村専務が用意してくれたのは、
チョーコーの「田舎みそ」、「無添加あわせ」、「無添加長崎麦みそ」の3種類。
「田舎みそ」
スーパーなどでよく見かけるおなじみの味噌。
麦麹独特の香りと甘みが特長。
「無添加あわせ」
米と大麦の合わせ麹をつかったあわせ味噌。
色は淡く舌触りがなめらかで、麹の香りとほのかな甘みが印象的。
「無添加長崎麦みそ」
長崎産のはだか麦を使用。熟成後に熱処理を行っていない「生みそ」なので、味噌本来の風味と香りが際立つ。
なかなか味噌の食べ比べなんて経験できないこと。
食いしん坊のママモニ隊は嬉々として味噌を味わっていました!
「田舎みそ」は、麹の粒も残っていてなんだか「若い」感じ。
「無添加あわせ」は、うん食べやすい!甘みが強くて
お味噌汁にはコレかな〜。
「無添加長崎麦みそ」は、うわぁ〜これはごはんに乗せて食べたいかも!
コクがあって、ほど良い塩気が美味しい!
今村専務
「どうですか? 全然違うでしょ? 「田舎みそ」のような味噌は熟成期間が短いんです。
だから麹の粒が残っている。封を開けた時からまた熟成しますので、この味噌を放っておくと赤味噌になるんです(笑)。
カップ容器に入ったものの蓋を見てください。
空気が入る穴が空いてます。味噌は空気に触れることで発酵し、熟成していきます。
「無添加長崎麦みそ」は、長崎県内のみで栽培されている在来種のはだか麦を使用しています。
ほとんどの味噌メーカーが安価で入手しやすい大麦に主原料を切り替えたのですが、私たちは、はだか麦での製造を続けています。その結果、今では長崎県は在来種のはだか麦を生産する唯一の県になっているんですよ。」
今村専務から一言
「私たちが今までも、そしてこれからも追求するのは「美味しさと健康」。
安心して味わえる地元の味をモットーに、ISO9001の取得も果たしました。
世の中には「安い」ものが氾濫していますが、結果として「安い」以上の
何かを失っているような気がします。
私たちは価格以上の満足度、安心感をお届けすることを責務として、これからも邁進していきます。
子どもから大人まですべての世代に選ばれるチョーコー、地域に愛されるチョーコーでありたいですね。」
醤油も味噌も、チョーコーが提供しているのは原料から製造法までごまかしのない「本物」。
県外ユーザーには「無添加のチョーコー」として知られているのです。
チョーコーの「減塩醤油」は日本で最も古い歴史を持っています。
健康志向が高まる中、無添加の製品、減塩醤油、味噌の生産は社会的にも大きな意義のあること。美味しさはもちろん、安心、安全、健康までを真摯に追求した商品群は北海道から沖縄まで網羅された販売網はもとより、海外での人気も高く、高値で取引されています。
今回の工場見学と今村専務とのやり取りの中で私たちが学んだのは、人が口にする物を作る企業のピンと張りつめた緊張感と責任感。
醤油1瓶に込められた企業の良心とプライドは、
私たちをこの上なく安心させてくれました。
長崎には「チョーコー」がある。これはかなり幸運なことです。
醤油と味噌。日本の食卓に欠かせない、毎日口にするものだからこそ、本当に良いものを選ぶことが、私たちに課せられた使命なんだな、そう感じた1日でした。
●日頃、地産地消を心がけている私…なのに長崎のブランド「長工醤油」を使っていませんでした。
今回の社会科見学を通して、毎日の食卓に欠かせない醤油が「安心安全」に作られ守られている事を知り、日頃使っている他の調味料もチェックしてみました!
私ができる家族への「安心安全」は、生産者の努力に目を向け、伝えていく事だと感じました。長崎の女性のパワーアップ・次回の社会科見学も楽しみにしています。
(Mさん)
●実は塩分や食品添加物に過剰に反応する私ですが、身近な調味料のお醤油に、あまりにも無知で、無頓着だったことに気づきました。製造工程から商品化されるまで、長い期間をかけて育てられるお醤油が、こんなにも大事に作られていることや、本物の味には、添加物をつかわずとも、思った以上に長持ちのする品質である事を再認識しました。混ざり物の無い商品なら、少量で、十分な料理のお味をつけられるのも納得!!私たちは、もっと生活のあれこれを見つめ、改めて考えることが必要なのかもしれないと感じた見学でした。次回の社会科見学も、期待しています!!(Nさん)
●醤油作りってスゴイ!まずビックリしたのが、昔の醤油作り。道具が工程順に展示されていて、こんなに手間暇かけて作っていたんだということに感心しきり!今も原料にこだわり、半年から1年も熟成させていることを知った私は感動でした!味噌の食べ比べでは、味噌の持つ特長や美味しさを体験したことで、早速、夕食の味噌汁は麦味噌で作ってみました!私も家族も大満足!味噌を買うときに何百円かを節約するよりも、この美味しい味噌汁を毎日いただく方がはるかに豊かになれる感じがしました。体に良い、新たな気付きもあり、醤油選び・味噌選びの基準も教えてもらえて、ちょっと賢い主婦になれた気がします!大人になってからの社会科見学は、いろいろな気付きがあり、楽しく学べた大満足の一日でした。( Kさん)
●醤油作りのお話しを聞けば聞くほど、醤油1滴に対する想いが深いということがわかりました。どんなにオートメーション化が進んでも、最後は人の判断が必要であり、そこには技術の伝承が根付いていました。一つの製品ができるまでの間、十数回もの検査を行っていて「美味しさと健康」を伝えるために、たくさんのこだわりがあることも、よくわかりました。大人になって初めての社会科見学。行く前はドキドキで緊張顔だったのに、帰りはリラックスのにっこり顔。知らなかったこと、知っていると思いこんでいたことが、実は全くわかっていなかったことなどに気づきました。謎解きができたような充実した時間を過ごせました。たくさんの時間を割いてご説明下さった、今村専務さん、後藤さん、本当に有難うございました。 (Oさん)