女性のチカラが、これからの時代をつくるキーワード!! ようこそ  ゲスト さん    |   ログインはこちら    |   会員登録    |

 「琴(=箏)」のイメージと言えば、「お正月」であるとか「大和撫子の嗜み」であるとか、「和服を着て艶やかにかき鳴らすもの」であるとか…とかく鯱張った「お稽古」の色合いが濃く、気軽に手が出せるものではない!と思っていたのですが…。黒川さんにお会いして、その既成概念は見事に覆されました!洋装で気軽に、時にはポップスなどをアレンジした楽曲を奏でたり、フルートやピアノといった楽器とのセッションを楽しんだり、黒川さんの「琴」は、ご自身のブログタイトルにもある通り琴と戯れる「琴遊び」なのです。黒川さんが琴を奏でる姿は、うっすらと口元に浮かんだ微笑みといい、弦の上を滑らかに動く指先といい、心底「大好きなものを楽しんでいる」時のもの。思わず見惚れるほど美しいオーラを放ちながら、琴の前に座っておられ姿はさながら天女のよう。「日本の伝統楽器」という、心なしか距離を感じてしまう「琴」という楽器の魅力と楽しみ方を、黒川さんはごくごく身近なものとして伝えてくれます。今回は黒川さんが実際に琴の演奏指導をされている現場にお邪魔し、たっぷりと「琴遊び」を楽しみながら取材してまいりました!「琴」に対するイメージがきっと大きく変わること、ウケアイです!

 取材の冒頭、黒川さんはまず「琴に触れる」ことを勧めてくださいました。この日は、出島交流会館内の「長崎県国際交流協会」で開催されている「日本文化体験教室」の見学を兼ねてお邪魔したのですが、日系クェート人のMさんと韓国人のYさんがお稽古の真っ最中。お2人とも、「琴」を始めて1年余り。それも月に1〜2回というスローペースにも関わらず、もう何年も習っているかのようにお上手なのです!「琴」どころか音楽経験自体があまりないママモニスタッフでしたが、黒川さんが勧めてくださるままに、爪をつけ、琴の前に…。

 MさんとYさんにマンツーマンで教えていただきながら、弦を弾いてみますと…ホロロンとあの「琴」の音が!五線譜が読めない私にでも理解できる、漢数字で表された楽譜通りに弦を弾くと、たちまち音楽が奏でられます。た、楽しい……!黒川さんが奏でる澄んだ音色とはほど遠いけれど、琴の懐かしく心を揺さぶる音が、私にも出せた!「♪さくら さくら」という、あのお馴染みの曲を瞬く間に弾くことができたのです。

 琴と遊ぶ時間を堪能し始めた私たちを、黒川さんは嬉しそうにニコニコと眺めておられます。黒川さんが「ここをね、こうして弾いてみましょうね」とほんの少しアドバイスをくださると、音の澄み方が一瞬で変わるのも驚き。そうして気づくのです。早くも琴を好きになり始めている自分に!実際に琴と戯れる「琴遊び」の時間は、私たちの中にある「琴」に対する壁、私たちと「伝統音楽」の距離を取り払ってくれました。黒川さんの指導法は、琴を難しいもの、縁遠いものと捉えるのではなく、まず触れること、琴「で」遊ぶのではなく、琴「と」遊ぶことを教えてくれるから、こんなにも楽しいのでしょう。

 すっかり「琴」に夢中になった私たちでしたが、それ以上に「黒川公子」さんという女性の魅力にも興味津々!いったい、どんな生き方をしてこられた方なのでしょう。

 黒川公子さんは広島県出身ですが、ご主人の転勤で20代の終わりに長崎の大瀬戸へ。今から30年以上前の大瀬戸は、「田舎」と呼ぶに相応しい長閑な町。黒川さんは2人の娘さんの子育てと主婦業に没頭する毎日を送っていたそうです。

 「結婚したのが22歳の時。それから主婦として夫と子どもを支えてきました。夫はね、とても活動的な人で、休みともなると1人で釣りに行ったり、ツーリングに行ったり、好きなようにやっていましたね(笑)。いつも子どもと留守番の私は、それが羨ましくて。そういう私を気遣ってくれたのか、下の娘が3才になって子育てが一段落した時、主人が「琴でも始めれば?」と勧めてくれて、お稽古に行くようになりました」。

 長崎に来る少し前から始めた「琴」を、大瀬戸に来ても続けるためには教室のある長崎市へ通う必要があったそう。今でこそ道も交通も整っていますが、当時は長崎市へ行くのも一苦労。

 「最初はバスで通っていましたが、それも本当に大変で…。結局、琴のために免許を取ったんですよ(笑)。琴を弾くのが本当に楽しくて。悩みがあっても琴を弾いている間は忘れられましたし、琴を習いに行くことで人との繋がりもでき、それも日々の楽しみになっていきました。台風など止むに止まれぬ事情以外では、お稽古を休むことはなかったです。娘が熱を出しても、お稽古の前までに治るように、がんばって看病したり(笑)」。

 9年という長い滞在となった大瀬戸在住時に、黒川さんは「生田流箏曲筑紫会師範」を取得し、琴教室「箏遊会(そうゆうかい)」を開きます。再び、ご主人の転勤で大瀬戸を離れることになった時、黒川さんは「大瀬戸」という町と人へ恩返しとしてのコンサートを企画しました。

 「その頃の大瀬戸では、琴どころか演奏会というものも滅多になくて。お世話になった皆さんに音楽のプレゼントをしようと、場所を借りたり演奏家の方を招いたり。初めて主催したコンサートは、皆さんに喜んでもらいました」。

 琴を教える、琴を奏で聴かせる、という喜びを、主婦のスペシャリストであった黒川さんは、40歳を目前に手に入れたのです。

 次の勤務地は横浜・磯子。長崎とは違う「文化」への傾倒がある横浜という街で、黒川さんはさらに「琴」への造詣を深めていきました。

 「関東には足掛け12年ほど暮らしたのですが、やはり文化への関心度が違うんですね。演奏会も多いし、教室もいろんなところがある。私は、「横浜市磯子区文化協会邦楽部」という文化協会へ加入していたんですが、いろんな文化の伝承者の方とお会い出来て、それはもう刺激と勉強になりました。琴も改めてプロの先生方、水野利彦氏・香登みのる氏、両氏に師事しました。和歌や短歌を学んだり、ボイストレーニングにも通いました。好奇心旺盛で、「やってみたい!」と思ったことは、まず挑戦してみるんです。教える側から、教わる側へ回るといろんなことが見えてきます。こういう教え方はやる気が出る、とか、こんな言われ方をしたら傷つく…とか。そういう部分が、今の糧になっているかもしれません」。

 様々な文化の最先端に触れ、充実した日々を送っていた黒川さんが、再び長崎の地へと戻ることになりました。海の見える一軒家を手に入れ、自宅でのお稽古はもちろん、出張講習も精力的に行っていた黒川さんでしたが…長崎へ戻って2年後、ご主人が癌で他界。悲嘆に暮れたその時期を支えてくれたのも「琴」でした。琴を奏でる時間、琴を囲んでみんなで語らう時間が、黒川さんを力づけてくれたのです。

 「夫の三回忌に合わせて、チトセピアホールでコンサートを開きました。「ひとひらの桜によせて」と銘打っての追悼コンサートは、とても印象深いものになりました」。

 ご主人が亡くなってしばらくすると、またも黒川さんを苦悩が襲いました。黒川さん自身が癌を患い入院。手術は成功し黒川さんはことなきを得ますが、これを機に長崎を引き払い上京することも考えたそう。

 「主人もいませんし、長崎に残る理由はないと言えばなかったんです。でも、長崎の生徒さんやご近所のみなさん、本当に良い出逢いに恵まれていて、この地を去るのがしのびなくて…。結局、そのまま長崎に暮らすことにしたんです」。

 今では定期的に上京し、長崎へはなかなか届くことがない高いレベルの技術や文化を持ち帰って生徒さんへと還元する、という黒川さんならではのスタイルを確立。素晴らしい演奏家を招いての演奏会も、黒川さんの人柄と人脈があればこそ実現しているものです。穏やかな微笑みと、優しい語り口からは、これまでに黒川さんが経験してきた様々な苦悩を感じることはできません。黒川さんのこれまでの歩みは、琴の音色となって私たちの心の琴線を震わせるのでしょう。

 「私には琴があったから、今、こうしていられるのです。琴の音色が大好きで、琴を弾いている時がとても幸せ。琴のおかげで出逢えた人もたくさんいて、私にとっての琴とは「人生そのもの」。なくてはならないものです。女性には、好奇心を忘れずにいろんなことに挑戦してほしいと思います」。

 「琴」という一生の宝物に出逢えた黒川さんは、ラッキーな人なのでしょうか?いいえ。誰にだって「大好きだと思えるもの」「一生続けていけるもの」はあるはず。それを見つける努力さえしていれば、きっと。黒川さんがおっしゃる「好奇心を忘れない」ことが、「生きがい」という宝物を見つける鍵になるのでしょう。誰にでも、いつからでもチャンスはある、ということを黒川さんは教えてくれているようです。

【編集後記】
 ゆったりとした物腰ながら、大きな車を転がしたり、パソコンを自在に操ったり、今はクェート出身のMさんに英会話を学んでいるという黒川さん。
 うふふ…と少女のように可愛らしい笑みを浮かべながら、次は何を始めようかと好奇心いっぱいの目をキラキラさせていらっしゃいました。

 そんな黒川さんの演奏が聴けるコンサートが6月12日(日)に開催!琴とフルートのセッション、「Amazing Grace」といった洋楽の名曲の合奏など、琴の新しい魅力を存分に味わえる1日です。ぜひ、足を運んでみてください!琴をきっと好きになりますよ!

2011年05月30日:ママ記者M
 
長崎県内で活躍中の女性たちや、長崎出身の県外で頑張る女性たちを、ママモニからピックアップして、インタビュー取材を行います。
「自分らしく、人生を楽しんでいるひと」「夢に向かって、頑張っているひと」「大切なことに熱中しているひと」様々なインタビューを通して、ユーザーの皆さんの自分流の楽しみ方や、何かのヒントが見つかるかも?! 刺激的で元気が湧いてくる記事をアップしていく予定です!
もしかすると…つぎは貴方が旬なひと?!