緑が揺れる田園の中に、白いテーブルと椅子、ゴーヤ棚の日除け。迎えてくれたのは、大きな帽子の下で朗らかな笑顔を浮かべた宮本さんと、ヤギでした。 宮本さんが園主を務める「彩園」は、会員の方みんなでお米を作ってシェアしたり、自分の好きな野菜を種まきから収穫まで担って育てたり、自分ができる範囲、求める範囲で「農」に関わることができる、会員制の「農」体験農園。 宮本さんが彩園を立ち上げたのは2009年のこと。なぜ、若い女性が1人で「農園」を作ることになったのでしょう。
「私は非農家出身なんです。父はサラリーマンでしたし、自営業でもないんです。それがなぜ、今こうして「農」に関わっているのかというと…実は、9歳の頃に突然、神様のお告げみたいなものでしょうか(笑)。「食料危機がやって来る!」と。子どもの考えることですから、食料危機を防ぐためには、作物が育たない砂漠でも栽培できるお米の品種を作るとか、品種改良すれば途上国でも食料を作ることができるのではないか…と。ですから、人生の岐路を選択するときには、必ず9歳の記憶が根底にあって、それで大学は農学部を目指しました。ですから、元々は農業がやりたかった訳ではなくて品種改良がやりたかったんです。ところがですね、日本の大学というのは、日本人消費者に向けての「育種」が主で、たとえば日本人が好む味であるとか、耐病性に優れた育てやすい野菜を作るとか…、私は途上国でも栽培が可能な頑丈な品種を作りたいのに、大学ではそういったものは求められていなかったんです。数量が落ちても美味しい物、そういったものが求められているのが現状で、それを見ていて、私のやりたいことと違うな……と思うようになっていったんです」。
わずか9歳で、世界の食料危機に心を痛めていたという宮本さん。幼くして自分に与えられた使命を感じ取った宮本さんは、ブレることなく「世界の食料危機を回避する」という一本道を歩み出していました。
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